どうして篠笛は管によって音程がばらばらなの?

ドレミ調律の篠笛の説明を見ると多くの場合「442Hzで調律しました」と書かれています。特に説明がないブランドの笛でもピアノのドレミのピッチから大きく変える理由はないでしょう。440~442Hz付近で調律されているケースが多いと推測できます。この差は聞き取りにくい微妙な範囲に収まるでしょう。


なのに篠笛を複数持っていると同じ調子の管なのに音程が全体的に違うことに気づいた経験はないでしょうか。





篠笛の中でも古典調は地域やジャンル等でそもそも設計が違うかもしれないのでここでは対象外としましょう。人の声の音域に合わせて6本"半"のように中間の管が作成されたり、音程にクセがある人が合奏するために通常とは少し音程の違う管をオーダーメイドする場合もありますがそれも今回はいったん考察の範囲外とします。


おそらく笛を製作した環境の温度や湿度の違いによるものと思われます。竹製の笛は温度が下がると収縮し音程が下がります。温度が上がると膨張して音程が上がります。


熱で膨張すると管が大きくなって7本調子だったら6本調子の笛に近づいて音程が下がるのでは?と思う方がいるかもしれません。しかし実際に試すと歌口の膨張により音程は上がります。


それに竹製品なので湿度によっても水分を含んだり放出したりして膨張・収縮します。笛師さんのホームページを読むと「通年気温何度・湿度何度で製作しています」という記述があることもあるのですが、ないことも多いです。


そのことから考えた私なりの意見ですが、真冬に制作された笛と夏に制作された笛で結果が変わることがあるのかもしれません。


また製作時の温度・湿度から離れるほど、笛の産地や製作方法によって膨張・収縮の程度が変わり、音程がバラバラになっているように見えるということも考えられます。


つまり気温30度で湿度50%の環境なら意図通り442Hzで演奏できるけれど、気温が20度になったとき管によって収縮率にばらつきが出ると、音程が合わないという事態になりかねません。



気温の変化でもうひとつ厄介なのはプラスティック製の篠笛は竹よりも膨張・収縮の程度が大きいということです。そのため冷えている状態から竹とプラで一緒に演奏しようとすると音程が全然合わない経験がよくあります。


その代わりプラスティックの方が息で早く暖まりやすいので吹いているとすぐ暖まって音も上がります。


演奏前に管を十分に温めておくのは大事ですが、それでもプラスティック管と竹管の混ざった合奏は気温によっては通常より余計に難しくなります。


ほかには例えば三味線と合奏するときにチューナーで合わせる人もいますが、炎天下では基準音を変えて、「今日は448Hzくらいにしておこう」という日があってもいいかもしれません。


まとめると篠笛の音程の際は、単なる調律のズレという枠組みでは捉えきれません。素材の違いもそうですが、最も重要なのは製作時及び演奏時の温度の湿度の環境により物理的な膨張・収縮といった環境要因と複合的に関わる、複雑な現象によって生じている可能性が高いと言えるでしょう。 

篠笛の音が出ない原因を考える

 

初心者の方が篠笛を手に入れたとして、一番大きな壁となるのは音が出ないということでしょう。実際Google検索のサジェストを見ても「音が出ない」は常に上位にあります。

そんな初心者の方のためにこのガイドを書いています。

答えはない


もしあなたがいま私の目の前にいたとして、篠笛の音が出なかったとしても、外見だけを見てなぜ音が出ないかを分析して音が出るようにしてあげるようなそんな魔法みたいなことはできません。

音が出る出ないの違いは本当に微妙な感覚の問題だからです。おそらく偉い笛の先生であっても難しいかもしれません。

それでも篠笛を吹ける人に見てもらうのはおすすめです。姿勢とか管の構え方とかそういう大前提に問題がある場合すぐ指摘してもらえます。

試してみてほしいポイントがある


誰でも急に音が出るようになる魔法はないと書きましたが、これが合っていないと音は出ないというチェックポイントはいくつかあるのでまとめてみました。

まず最初に音を出すときは大抵このように習います。

歌口の手前に下唇を載せて、口の向こう側の端(エッジ部分)に息を吹いて、空気の流れの半分が管の中に入り、もう半分が管の外に出るようにする。

そうなのですけれどこれだけ音が出たら苦労しません。もしかしたら穴を1つも押さえない状態(七の音)なら出るかもしれませんが、1つでも指で穴をふさいで音程を下げていったら出なくなるというのが普通だと思います。

ある程度練習して音が3種類くらい出るようになったとしても低くなるほど(二や三の音)は出ないですし、高い音(甲の音)を出そうとして2の音は何とか出ても3,4,5と上がっていくと出なくなります。

(二や三の音という表現がわからない方は篠笛運指表をご覧ください)

音が出せるようになっても、なぜか出るときと出ない時がありませんか。私も最初のころはいつもと同じように吹いているつもりなのに出たり出なかったりするのは本当に不思議に思ってました。

スピードが大事


そこでまずチェックしてみてほしいのは息のスピードです。

基本的には低い音を出すときはゆっくりな息が必要で、高い音ほど素早い息が必要です。

二、三みたいな低い音と6、7、8みたいな高い音では同じ篠笛でも吹き方が全然違うということをまず念頭に入れてください。

なぜかというと(すごく簡単な説明になってしまいますが)音は空気の振動なので、高い音は振動が速く、低い音は振動が遅くなります。高い音を出したかったらスピードは必要で、低い音を出したかったらゆっくりにする必要があります。

最初は穴を1つも押さえない七の音から練習すると思いますが、息の角度と同時に息のスピードも意識して、ものすごくゆっくりな息から段階的にスピードを上げていってください。

口から出る息は水道につないだホースみたいなものに例えられます。水の出口を絞っていくほど出てくるスピードは速くなっていきます。だからスピードのある息といっても力をいっぱい込める必要はありません。

息の角度に関しては50:50の割合で息が管の中と外に分かれるという原則は守りつつも、一般的に高い音ほど外に出る割合が多くなるといわれています。といっても本当に微妙な差です。

角度の話


細かい話で下唇のどのくらいの場所に歌口のどこを乗せるかという問題もありますが、口の形や大きさは人それぞれなのでこれといった正解はありません。ひとりひとり違います。

まずは歌口と下唇の関係はいまは固定でいいです。その状態で管を回すように(前後というか外側に向けるか内側に向けるか)を調整してほしいです。ちょうどいい範囲というのがあるはずです。これもどの音程を鳴らしたいかによって変わります。

イメージとしては2つの歯車がかみ合うような感じで管の角度を変えて、ちょうどいいラインを探します。

ふつうは低い音程の時ほど管は内側を向き、高くなるほど外側に向けた方が安定します。もちろん微妙な感覚です。

もう一つ角度の話で、顔を固定したまま唇の先の動きだけで息の上下方向を変えることはできるでしょうか。これも本当に微妙な感覚で、ちょっとずつ上から下に移動させるエクササイズをします。

この角度もどの音程の音を出したいかで微妙にですが変わります。

まとめ


まとめると音を出すときに考えるコントロールすべきポイントは1つでなく複数あります。ここで説明しきれていないコントロールすべきポイントもあるかもしれません。でも説明した3つはとても重要です。

どのポイントから取り掛かる方がいいかという順番は特にありません、角度は意識していたけれどスピードはあまり意識していなかったとしたら、そこから試してみてほしいです。

ちょうどいい息のスピードと、管の角度と、息の角度がうまく交わる感覚が掴めたら、音を出すのがだいぶ楽になってくるでしょう。

強調したいのは甲の音(高い音)と呂の音(低い音)では交わるゾーンが全然違うということです。

この感覚は笛が変わったときはもちろん時間や場所でも違ってくるので、毎回瞬時に探る練習をするといいでしょう。